次のかけらを当てるあそび
4.1 で文をかけらに切りました。そのかけらで何をするのでしょう。
おどろくことに、たったひとつ だけです。次にくるかけらを当てること。
同じことをためせます。むかし話の本を1冊ぶん数えておいた表が用意してあります。
規則は一行もありません
この機械は日本語の文法を知りません。ことばの意味も知りません。
数えただけです。 それなのに、二つか三つのまとまりはそれらしく見えますね。
こうして次を当てるようにつくったものを と呼びます。むかしのものも、いまのものも、していることは同じです。
前を長く見ると よくなります
8こ に変えてもう一度つなげてみましょう。ずっと自然になりますね。
当たり前です。前の8字ぜんぶを見て選んでいるのですから。
ところが実習の下に出る文を見てください。
うまく書いたのではなく、写しただけです
むかし話の本にそのままある文です。
前の8字が本に一度しか出てこなければ、その次にくる字もひとつだけです。選ぶ余地がありません。ただ本をなぞって書いているのです。
数えてみるとこうです。
| 前の字を何こ見るか | 文はどうか | 本をそのまま写した割合 |
|---|---|---|
| 1こ | ばらばら | 0% |
| 8こ | とてもよい | 54% |
「見たことがありません」
では、本にない文をつくろうとしたらどうなるでしょう。
1こ で何度もつなげて本にない文をつくってから、8こ に変えてみてください。
止まります。ほとんどいつも、何も言えなくなります。
覚えたことを吐き出すか、わからないと言うか のどちらかです。
新しい文をつくり出すことはできません。これが数えるやり方の壁でした。
では いまのものは何がちがうのでしょう
こんどは 同じむかし話の本で学んだ 小さなAIをとなりに置いてくらべます。
同じ本だということが大事です。材料がちがうから上手なのだ、と言えてしまってはいけませんから。
右はゆきづまりません
文の終わりに何でもいいので付けたしてみてください。左はすぐに「見たことがありません」になります。
右は 何を入れても答えを出します。 はじめて見る文でもです。
数えているのではなく 重みを合わせたもの だからです。3.2 で見たあの重みです。表からさがすのではなく計算して出すので、ゆきづまりがありません。
そして右が一行書いたあと、左はすぐに「見たことがありません」になります。
当たり前ですね。いま右がつくった文は本にない文なのですから。実習の下にもそう書いてあります。
数えるやり方は8字で見ると54%が本をそのまま写したものでした。右は0%でした。
同じ文なのに答えがちがいます
かってに書きつづける を押し、はじめの文にもどす を押してからもう一度押してみてください。
ちがいますね。
1位だけを選ぶのではなく 確率のとおりに引く からです。70%のものがあれば10回に7回ほどそれを選び、残りはほかを選びます。
どれくらい思いきって をいちばん上まで上げると、下のほうの候補まで拾います。すると とんちんかんになります。
反対にいちばん下まで下げると、いつも1位だけを選びます。すると 同じことばをくり返しつづけます。
それだけを上手にさせたら
ここまで見ると変です。次のかけらを当てることの、何がそんなにすごいのでしょう。
ところが とても上手にさせると 変わったことが起きます。
「次の文を英語に直すと:」の次にくるものを当てれば → 翻訳 になります
「一行でまとめると:」の次にくるものを当てれば → 要約 になります
だれかが質問をして、そのあとにくるものを当てれば → 答え になります
だれも翻訳のしかたを別に教えてはいません。次のかけらを当てることだけをさせました。
前を全部見るには
数えるやり方は前を8字までしか見られませんでした。いまのモデルはもっと遠くまで見ます。
ところが文が長くなると、前のことばは何十個にもなります。それを全部おなじように見るのでしょうか。
いいえ。選んで見ます。次のチャプターでその話をします。
このチャプターのよりどころ
- 2 Shannon, "A Mathematical Theory of Communication", Bell System Technical Journal 27 (1948)
- H5·P13 著作権が切れたむかし話です — 方定煥、ジョーゼフ・ジェイコブズ、アンデルセン、楠山正雄
- P13 上の話で わたしたちが学習させた小さな言語モデルです。もらってきた重みがありません
- H5·P13 前のことば三つで数えると このお話の本をそのまま写したものが59%で、学んだほうは0%でした。(英語版のお話の本ではかると33%です — くりかえされるところが少ないからです。日本語版は字ひとつで数えるので前の8字までで54%、学んだほうはやはり0%です)